救急総合診療部(ER)
救急総合診療部(ER)と初期研修について
現在、救急総合診療部での初期研修としては、二年間を通しての外来当直勤務と一年次1ヶ月、二年次2ヶ月のERローテーションがあります。
到達目標として、初期研修の二年間で、将来いかなる診療科の医師になっても必要となる緊急時の基本的な診断もしくは初期治療が遂行できるようになることを目指しています。
初期研修医はS-1以上医師の指導のもとに、あらゆる患者に適切に対応出来るようにトレーニングされ、初期研修後半は自らも研鑚をつむと同時に後輩を指導することを通して、自らの臨床能力・指導能力を高めながら学ぶという、茅ヶ崎徳洲会総合病院創設以来の屋根瓦方式です。こうした方針は今後も教育病院としての機能を維持していくためにも必要不可欠です。一年次の医師は二年次になってER勤務が円滑にできるように各科のローテーションとER研修を通じて十分な研鑽を積む必要があります。
具体的行動目標
* 外来患者重症度の判定が適切に行える
* バイタルサインの適切な評価ができる
* 簡潔且つ明確な病歴を取れるようになる
* 救急患者の基本的身体診察の修得
* 単純レントゲン、CT、血液検査、各種の救急に必要な生理検査の技能と解釈
* 見逃してはならない重症疾患の鑑別ができる
* 重症患者の基本的な初期治療ができる
* 心肺蘇生術(ACLS)のリーダーとなることが出来る
* 各科に紹介すべき状況とそのタイミングの判断ができる
* 簡潔で的を得たケースプレゼンテーションの技術を習得する
* 救急外来業務に必要な基本的な法律知識を習得する
いついかなる時でも、スタッフや病院の都合によらず、患者さんのニーズに対応する医療の実践を初期研修での経験を通して心と体で覚えることが究極目標です。
日常の業務
* 救急外来を受診する患者の診療およびカルテの記載
* 検査オーダー
* 処方箋の記載(各科からの定期処方を含む)
* 当直日誌の記載
* 救急患者のコンピュータの入力(病名、メモ欄は必須)
* 各科スタッフへの直接のもしくは電話でのコンサルテーション
* 各科外来からの依頼処置および診療依頼(腹水穿刺、点滴、喘息重積、胸痛の患者など)
* 電話での問い合わせの応対
J-2を含む上司との関係は、”ほうれんそう=報告、連絡、相談”が基本です。これは医師に限らず、どの職種にもいえることで、社会人一年生は決して自分だけでひそかに仕事を抱え込むことがないようにしてください。
J-2のERローテーション中はコンピュータの入力状況の確認、備品の整理、メンテナンス、等 ER自体の管理に関わっていただきます。
定期カンファレンスへの積極的な参加
また、外来当直中はER専属レジデント、各科スタッフ、非常勤スタッフの下、救急患者さんの診療について学びます。しかし本来、患者さんにとって、ERは研修医の教育の場というより患者さんが受けるべき救急医療サービスの場であることをくれぐれも忘れないようにしてください。
当院の救急診療の状況
当院の救急総合診療部は開院以来、基本的にoutpatientのみの運営を行なってきました。救急部門での経過観察の時間が多少長い傾向がありますが、救命救急センターのように救急専用ベッドを有さない完全北米型の救急部門です。その理由は、当院では重症救急の根本治療は内科、外科をはじめとする専門各科が即座に対応できるからです。
年間救急搬送台数
約6000件弱(茅ヶ崎、藤沢市、寒川町、平塚市など)
茅ヶ崎市の出動台数の約半分を占めている。
対応患者
一次、二次、三次の区別なく受け入れており、救急車に限らず基本的には患者さん、地域診療所、救急車からの診療要請はいかなる状況でも受け入れています。その理由は、実際の臨床では救急車で来院する人がいつも重症とは限らないのと同様に、重症疾患の患者さんでも歩いて来院されることもあり、病院外でのトリアージは困難と判断しているためです。救急外来の"救急"とは患者さんが救急であると考えている状況(病気ではないものも)全てに対応する部門であると考えています。
ERスタッフ
部長:
北原 浩(救急総合診療部 部長)
内田 祐司
田口 瑞希(ERチーフレジデント)
若井 慎二郎
村尾 良治
李 相一
業務時間
ERローテーションの研修医
[平日]
AM7:00~PM7:00 PM7:00~AM7:00
ERローテーション中のレジデントの数で変更あり
ER通常当直
[平日]
PM7:00~AM7:00(休前日は~AM9:00)
[休日]
AM7:00~PM7:00(休日はAM9:00~)
短い二年間で出来るだけ多くの患者さんを診療できるよう積極的な姿勢が望まれます。研修初期では少ない患者さんをゆっくりと見ることからはじめて、次第に出来るだけ多くの患者さんを同時にケアできるようにトレーニングします。
現在、ERスタッフはまだまだ人材不足ですが、絶えず救急診療に協力的な各科の当直医が常駐していますので十分な指導が受けられると思います。
カンファレンスは毎週火曜日のduty終了後です。内容はその週の興味深い症例やみんなにフィードバックすべき症例の検討会、および救急診療に関連する内外の文献抄読会です。研修医にとってはプレゼンテーション練習の場でもあり、前もって十分な時間を取り、余裕を持って臨んで下さい。
病棟に入院になる患者さんは基本的に入院科のスタッフやレジデントに任せてもかまいません。基本的にその間に待っている患者さんがいればそちらの診療を優先してください。
繰り返しますが、救急外来は研修の場というより,重要なサービス部門という認識をもって診療活動を行ってください。
救急外来は一般市民にとって最後の頼みの綱となるところです。医学的な問題の有無にかかわらず行き場のない人など様々な人が来院します。時に世の中や院内の矛盾が噴出するのをみて疑問を感じたり、腹立たしく感じたりすることもありますが、救急部門のスタッフしか出来ないことをしているのだという誇りを絶えず持って診療をしてください。日勤の勤務がつらかったのにそのまま当直に入ったり、救急車の呼ぶ必要のない患者さんが救急車で来院したり、前医の対応に怒りをあらわにしても、迷惑をするのは患者さんです。むしろそうした自分の気持ちを隠して患者さんに安心を与えるように努めることがプロの仕事であると思います。いい意味で常にプロとしての自覚と誇りをもって仕事をしてください。そして研修医であっても病院を訪れる患者さんにとってはその時間の病院を代表する一人の医師であることを絶えず自覚して責任のある言動・行動を心がけてください。
コンサルテーションに関して
初期研修医は患者さんに関して疑問点があるときや、わからないことはどんどんコンサルトすべきです。
わからないことの引き伸ばしのためにいたずらに時間を費やさないこと。
医学的に入院の必要はないと判断されても、患者や家族が希望すれば、病棟当直医にコンサルトすることは一向に構いません。
自分がERにいるのは、患者さんに医学的説明をすることではなく、行き場がなくて困っている患者さんを安心させるためであることを常に念頭においてください。
ERで研修医によくある問題行動
本来的に救急外来は、トラブルになりやすいため、臨床経験豊富な臨床医がやらねばならない仕事であるはずですが、当院を含め多くの病院ではその診療時間の関係から若い医師に任されているのが現状です。そのためにどうしても臨床経験が少ないことから生じるトラブルが多くなります。
[case1]患者さんに「どうしてこんなことで来たの」「なぜこんな時間に来たのか」とつめよる
いきなりこのようなことを聞いても誰の得にもならない。そのうちメールや投書で苦情が寄せられる。
そもそも自分の不満をいきなり患者さんに話してどうする?
[case2]眠たそうに・つらいことを表に出して診療する
患者さんに余計な不安感を与える。診療を始める前に一息ついて。プロの顔に切り替える。
[case3]疑問を残したまま、確信を持てないまま一人で処置をしないこと
確信のもてない処置は大概、間違っている。必ず上級医に声をかけること。
合併症を起こした時に困るのは自分です。
[case4]怒っていたり、怒鳴る患者さんに正面切って喧嘩する
医師-患者関係が複雑になり、診療がやりにくくなるだけ。診断に間違いがあれば医師の責任だけが問題となる。絶対に相手の土俵に入らないこと。
[case5]診察を早く受けたいとあせっている患者さんに対してもかたくなに診察の順番を守る
適格なトリアージを。別の場所に案内して診察を早めにしたほうがスムーズにいく。ミスマネージメント(誤診をする、点滴が入らないなど)をしたときになかなか納得してもらえない。
[case6]よくわからないのでただ単にベッドで経過観察だけをすること
その間患者さんは放置されると思うだけ。積極的に上級医に相談し、患者さんに十分な説明をする。
[case7]勤務時間が終了して、適当な申し送りでERからさっさと引き上げてしまうこと
患者さんのケアの継続性を保証することは救急医の最重要業務の一つ。患者さんの目の前で正確な情報を伝え、引継ぎ医師を患者さんの目の前で紹介するのは常識。
診療に忙しかったり、眠かったりするとERに来院する患者さんがついつい自分の目の前からいなくなりさえすればいいという気持ちになり、その場限りの適当な診療と説明で済ませてしまうことがよくあります。
このような行動をわれわれはGOMER(Get out of my ER:私のERから消えてくれ)と呼んでいます。病棟で継続して患者さんのケアをすることがないER医師は患者さんへの責任感が希薄になりがちで、ドクターもナースもたえずこのような行動をとってしまう危険があります。
たとえば、
* 診断・治療法が判らないまま患者さんに聞かれてもあいまいな説明をして翌日の外来にまわす
* 専門科に関係する軽症の患者さんを適当に診察してわざわざ待ち時間の長い午前診の専門外来に回す
* はやく病棟に上げたいので必要な検査をスキップする
* 仕事を増やしたくないのでナースが研修医に検査・処置をしないように圧力をかける
* 電話で問い合わせた患者さんに対して巧みに診察を遠慮してもらうように仕向ける
など、無責任医療を推奨するGOMERの虫はERのあらゆるところに飛び交っており、多くは知識・経験不足と責任感の欠如から発生することが多いようです。
普段の研修医の行動を見る限り、患者さんに対するサービスを充分に行うためには二年間の初期研修では不十分で、さらなる学習と経験と自己研鑽が必要です。繰り返し強調しますがER診療の目的はトリアージをすることのみならず究極的には患者さんへのサービスであることを絶えず認識し、自分の限界をはっきりと知る一方で、自分の仕事内容(わからないときは上級医・専門医に聞くことも含めて)とその時間での患者さんの健康と受診後のケアの継続性に責任を持つという姿勢が必要です。
ERに従事しようとする者はあらゆる場面に適切に対応できるように専門科の枠にこだわらない幅広い学習と経験に加えて絶え間ない向上心が必要なことを忘れないでほしいと思います。
【参考図書】
Emergency Medicine: A Comprehensive Study Guide 5th edition Tintinalli et.al(米国救急医学会(ACEP)のオフィシャルリファレンス)
研修医当直御法度 第二版 三輪書店
研修医当直御法度 症例編
Manual of Emergency Medicine 4th Edition ,Lippincot Williams&Wilkins(邦訳あり)
Emergency Medicine: Concepts and Clinical Practice 4th edition: Rosen, Mosby 内科のHarrison,小児科のNelson,外科のSabiston等と並ぶemergency Medicineの有名なレファレンス
【雑誌】
レジテント・ノート
ERマガジン
JIM
Annals of Emergency Medicine
American Family Physician
Journal Watch: emergency medicine
【Web】
http://www.emedmag.com 救急とプライマリ・ケアを中心とするサイト
http://www.embbs.com 症例・画像などを中心とする学習サイト
http://emedhome.com/tips.cfm
http://www.acep.org 米国救急医学会
http://www.emedicine.com
最終更新日: 2009年07月06日 11:00
